4SV3 YZF1000R ThunderAce 1997 EUR/GB
What's about YZF1000R
 エンジン出力の強力化に伴い車体の強化も必要になっていったリッターマシン。風早も以前に乗っていた3GM系FZR1000の最終時期には各社とも旧来の車体では限界にきており、補強するたびに重量が増える状況となっていました。見た目はレプリカ、実情はハイスピードツアラー、そんな車体が増えていった時代でした。CBR1000FやZZ-R1100、GSX-R1100といったライバルに比べて20kg近く軽量と言われた3GM5-FZR1000でも乾燥214kgもの重量がりました。そんな頃にホンダが軽量ハイパワーなCBR900RRを登場させたのでした。そこでヤマハはYZF750SPのフレームをベースとして新設計し、エンジンも内部や制御系をリファインした車体が生み出されました。それがYZF1000R ThunderAceでした。3GM5/6と比較して20kg近くも軽量化されており、また、各部も徹底してリファインすることにより、軽量ハイパワーなマシンへと変貌していました。CBRとYZF、この2台の登場がリッターSSが真にスポーツできる車体へと変貌するキッカケを作って行ったのです。

 管理人の今回の車体はEU一般仕様といいつつ事実上のイギリス仕様車。ショップに届いた時点では前オーナーがつけたOVERのフルエキとバックステップがついていました。個人的にはノーマルのほうが好きなのでどちらもノーマル戻しをしています。
管理人のYZF1000R(2008年06月時点での仕様)
NewX-700 / MD50mmF1.7 / TREBI100c
 
NewX-700 / MD50mmF1.7 / TREBI100c
主なスペック
機種コード 4SV3
全長/全幅/全高 2085/740/1175mm
発動機種類 水冷4サイクル並列4気筒DOHC5バルブ
排気量/径/行程 1002cc/75.5×56.0mm
最大出力 145ps/10,000rpm
最大トルク 11.5kg-m/8,500rpm
タンク容量 20リットル(予備5リットル)
主な変更点
YZF750SP用純正ステップ
YZF-R1(98)用MOSキャリパ
MRAレーシングスクリーン
GIVI モノラック+モノキーベースM2
OHLINS 46HRCL
使用タイヤ
前:Michelin Pilot ROAD2:120/70ZR17
後:Michelin Pilot ROAD2:180/55ZR17
追加装備
前オーナー自家製FRPシングルシートカバー
設定変更
特記事項無し
インプレッション
○ポジション等
 まずポジションは最近のスーパースポーツほど過激ではないです。といってもやっぱり先代3GMと比べるとシートも高くなり、ハンドルも近くなり、それなりにレーシーにはなっています。そんな無茶な高さのシート高ではないのですが、横幅が結構あるせいか、シートのカドが面取りしてあっても足つきは悪いです。177cmある管理人でも大変だったりします。

 ある程度ツーリングユースを意識してあるのでしょうか、ピリオンシート下部にちゃんと収納式の網掛けフックが付いています。XJR1300やTDM850に付いているのと同じタイプです。んなもんつけるならもそっとマシなシートデザインにしろやっていう突っ込みは無粋ですね(汗)。ピリオンシートが広くて網掛けフックがついてはいますが、シートカウルがアホほどでかいのでフックが使いづらく、あんまり積載はよろしくありません。1台目の赤銀の時は峠のオイタ用に近かったのでサイドバックを使用し、2台目ではモノラック+GIVI箱を設置しています。
○エンジン関連
 系列的にはFZ750を源流に持つ5バルブ4気筒DOHCです。3GM系FZR1000をベースにクランク形状やポート形状、制御系がリファインされており、出力特性はより扱いやすくなっています。5速のまま60km以下で走行できてそこから普通に再加速できるリッターSSってこれくらいじゃないですかね?EXUPが半開以上まで開くのは6000rpmから。ここからエンジンの性格は急変し、一気にレッドゾーンの11,500rpmまで吹けあがります。基本的に正規逆輸入された車体はEUR/一般といいつつイギリス仕様なのですが、そのmphメーターであっさり100を越えてしまう加速を見せます。

 このエンジンのいいところは燃費です。市街地でリッター10マイル前後、普通のツーリングでリッター12〜14マイル走りました。一応オクタン価91以上が指定なんですが私はレギュラーしか入れたことがありません。ちなみに私の過去最高燃費はこの車体でたたき出していて、なんとリッター15マイル。リッター24kmも走るリッターSSってどないやねんって思いましたよ。お財布には非常に優しい車体でした。ちなみに今回手に入れた個体は飛ばし気味のツーリングでリッター12マイル前後、通勤や町乗りでリッター10マイルちょいってところです。

 発熱はハンパじゃないです。FZS1000でファンが回らない状況でもYZF1000Rはファンが回ってます。3GM-FZR1000と比較した場合、多少でも動いていてラジエーターに風が当たると一気に冷えるのでマシといえばマシですが、それでも夏場は死ねる発熱をしています。湾曲ラジエーターと抜けのよいサイドカウル形状が効いているんでしょう。
○足回り・ハンドリング
 YZF1000Rの一番の目玉はやっぱりMOSキャリパでしょう。このモデルから採用されたキャリパです。このブレーキ、初期制動性能そのものはOEMブレンボに劣りはしますが、握りこんでいってからの性能とコントロール性はぴかいち。これ以降の主要なモデルにどんどん採用されていきました。100mmピッチなんで大抵のヤマハの大型車に流用が効きますのでハイエナ対象にされちゃったりするんですよね。また、前後ホイールも新型の軽量ホイールに変っています。ばね下重量の軽減はハンドリングにかなり影響を及ぼしています。

 YZF1000Rになってハンドリングがよりすばらしくなりました。不要な入力をしないと安定して直進し、しっかり荷重をかけるとその分ちゃんと旋回してくれます。ただし荷重をかけないで向きを変えようとしても曲がりません。基本的に弱アンダー傾向のハンドリングを示します。一部でその「基本的には待てで待つタイプ」なハンドリングを揶揄してアンダーエースなんていわれてたりしますけどね。ちなみに基本的にリアステアで回るFZR1000とはがらっと変わり、前荷重でくいっと曲がるフロントステアに味付けされています。リアの駆動力をキッカケに旋回するリアステアでも回りますが、思い切って前荷重をかけてやるとぐいぐいと面白いように切れ込んでいくハンドリングを示します。この辺がいわゆる”待て”が出来る味付けの味噌なのかもしれませんね。ノーマルの足回りの出来もかなり秀逸なほうだと思います。φ48mmという巨大なインナーチューブが圧巻ですが、その高剛性のおかげで安定したブレーキングも出来ました。リアもノーマルのサスユニットの出来が結構よかったと覚えています。当時すでにXTZ750にはオーリンズを入れていたのですが、こいつへのオーリンズ投入は不要かもと考えてしまうような出来でした。見た感じFZS1000のリア周りってYZF1000Rっぽいきがするんですが……。ちなみに抜けてしまうとどうしようもありません。足回りのセッティングが微妙だとチェーンジャダーが発生してしまったりとヘンな動きをします。管理人はリアサス抜けが我慢できずに08年6月にオーリンズへ換装してしまいました。雷帝用は通常型も油圧プリ型も車高調整機能付きです。
○カスタム
 バックステップがYZF750R/SPと共通で使えます。大抵は750と1000の兼用として売られています。また、純正では用意されなかったシングルシートカバーですが海外メーカーから社外品が出ています。といっても純正のピリオンシートから金具を一切合財移植しないと使えないシロモノですけど。ブレーキマスタはMOS標準の14mm径ですから、ラジアルマウントMOSが搭載されている頃のYZF-R1用純正ラジアルマスタがそのまま流用できます。
(C)1998/2005/2006/2007 Takayuki Kazahaya