YAMAHA TRACER900 2018/ Japan
What's about TRACER900
 ついノリと勢いっていうわけでもないのですが、何となく新型が出て新型を楽勝で導入できる余裕もあったのでついつい買ってしまいました。18年に導入して今までまともに記事にしてこなかったのは色々ありまして、一番の理由は「とにかくノーマルのままの時は買い換えたことを激しく後悔したレベルの外れ車種」だったからです。まともにコーナリングさせられるようになるまでが長かった……。そこに加え私自身の転職直前の鬱再発もあって、それがクリアになってまともに走り回れるように育つまで2年近く掛かった、というわけですよ……。
 
○TRACER900とは
 2015年に発売された初代MT-09 tracerですが、4年目を迎えるにあたり2回目のマイナーチェンジを実施してきました。と思ったら、事実上のモデルチェンジをぶちかましてきました。モデルチェンジするにあたり、MT-09やMT-10、YZF-R1などでも出してきたSPモデルとノーマルモデルの2本柱を掲げ、ノーマルモデルに比べてGTモデルは「グリップヒーター」「クイックシフター」「油圧イニシャル付リアサス」「フルカラー液晶メーター」をノーマル+8万円アップで装備。2018年夏の発売開始と同時に売れに売れまくったのは残念ながらGTモデルだけで、無印モデルが完成検査切れの在庫を大量に抱えそうな勢いで売れ残る始末となりました。
 初期モデルを1型、ライトマイナーが入った17モデルが2型とすると、今回のモデルは3型になります。1型>3型の変わった点については詳しくは後述しますが、変更点を簡単にざっくりまとめた言い方をすると「長距離ランナーとしての性能をより追求した方向に変化した」と言えます。反面、スポーティーさはかなりスポイルされることとなりました。
 
○2015モデル(1型)と2018モデル(3型)の違い
  • スイングアームが6cm延長された
  • 足回りの設定が異様にガッチガチに硬いものに変わった
  • ECUのセッティングが大幅に大人しい方向に変化した
  • スクリーンの上下可動機構がより操作性が良いものに変わった
  • ハンドルそのものの全長が大幅に短くなりナックルガードと合わせて横幅が狭くなった
  • 前側のシートストッパーとシート形状が変わり着座位置も数cm後ろに下がった
  • パニア取りつけラッチがシートカウルと一体化された
  • 上記2点の変更にともないサイドカウル類が変更になった(タンクとライト、メーター周辺は共通)
  • カウリングの固定にピンスナップの割合が大幅に増えて整備性が向上した
 このうち、結構致命的に改悪に近いのがECUマッピングとサスセッティングの変更です。
 まず足回りについてですが、こちらは本当に致命傷でした。6cmスイングアームを延長してあるのにフレームの鋳物が全くそのまま。しかも足回りのセッティングはロクににつめていないようで、リアが突き上げるとフロントがヘンに踏ん張るのでフレームに応力が掛かって変な挙動をする、左旋回でバンク中にギャップを拾うとフロントの圧側が固すぎてリアサスがブレイクしてしまう、イニシャルを掛けるとリアのダンバー調整が事実上の松竹梅なのでまともにセッティングが出ないなどなど、よくこれで発売したなってくらい酷いものでした。

 ECUマッピングについては乗り換えた当初は戸惑いも大きかったのですが、乗りこんでいくうちに慣れてしまいました。一番は低速・低回転でのアクセルのツキを相当鈍くしちゃったので低速からチョン開けで制御したいときに操作に車体がついてこない、という不満でした。これについては体が慣れてしまった今となってはどうでもいい話です。
管理人のTRACER900 (2021年09月時点での仕様)
  
  
主なスペック
機種コード B5C5
全長/全幅/全高 2,160/850/1,430mm
発動機種類 水冷4サイクル並列3気筒3バルブDOHC
排気量/径/行程 897cc/78.0×59.0mm
最大出力 116ps/10,000rpm
最大トルク 8.5kg-m/8,500rpm
タンク容量 18ットル
主な変更点
KYB フロントサスキット(〜16用)
KYB リアサスキット
 
使用タイヤ
前:Michelin PilotRoad 120/70ZR17
後:Michelin PilotRoad 180/55ZR17
追加装備
GIVI SR2139+M5ベース(常備:MAXIA E52青)
純正パニアケース
TRACER900用 Performance Damper
JRC製分離型ETC車載装置
KITACO USB電源
  
変更設定
現状ではなし
インプレッション
○エンジン関係
 基本的には上述の通りです。マッピング的にAとBは従来通り、STDに改変が入っていて開け始めのツキを鈍くしてあるようです。それ以外は乗り慣れてしまうと15〜17と18〜20でそれほど大きな差はないと思います。そこ以外のエンジン関係についてはほぼ20までのMT-09シリーズとなんら変わりはないですね。3年で1万キロちょっと走った現状で平均燃費は実走リッター22km前後です。
 
○足回り・ハンドリング
 無印の場合、ノーマルの足回りだとかなりポンコツです。私の個体は前後ともKYBに換装してるのですが、換装前の状態は「ただまっすぐ長距離走るだけならこんなものかもね」というくらいの酷さでした。ちなみにGTも何台か試乗していますが、あちらはセッティングの追い込み次第ではどうにかなると思います。無印の場合、ノーマルのフロントサスのセッティングがかなり悪く、戻り側は柔らかく戻り側は硬いセッティングになっています。これが残念なことにほぼ松竹梅しか調整できないダンパーダイアルをいじったら同じ傾向のまま動作範囲がシフトするだけなので、TENが固くなったらそのままCOMPも硬くなってしまいます。で、リアサスが結構柔らかい方向なので、フロントの突き上げのオツリをリアが貰っちゃうような感じで不安定さだったり、バンク中のギャップで急に沈んでしまったりという症状に繋がっています。私の個体にはPDを装着していますが、ここまで症状の原因を突き止めた現状ではPDではどうにも改善しない、と考えています。
 
 無印の人の場合、前後ともKYBへの換装は強くお勧めします。もしくは海外通販などでオーリンズ等のインナー交換キットを手に入れてインナーを入れ替えてしまうのも手でしょう。どっちにしてもノーマル状態だとかなり厳しいです。リアサスは1Gさえ調整できればあとはどうにかなるかもしれません。私の個体はリアサスにアタリが付く前に早々に見限ってKYB化してしまってるのでアタリが付いた状態を知らないってのがアレですが……。GTに乗っている人はリアサスで1G沈み込みを40mmに調整後>リアサスのダンパーを粗く調整>フロントのダンパーをTEN→COMPの順に調整、イニシャル微調整>リアサスを微調整の順で多分それなりにセッティングは出ると思います。
 
 前後足回りをKYB化しているとかなり軽快なハンドリングになり、コーナリング限界も上がります。パイロン並べてスラロームしたりして遊んでもかなり色々遊べます。
○車体関係
 基本的に1型との比較になります。
 
 狭くなったハンドル幅ですが、これは悪くないです。ただそのまま狭くすると着座位置とハンドルの距離が近くなりすぎるので、3型ではシート着座位置が若干後方にずれています。スイングアーム延長は半分はその影響かと思われます。後ろに下がったことと10cmグリップ間距離が狭まったことで、着座位置としては「若干バックステップ気味な普通のバイク」になりました。

 シートに関しては表皮素材は圧倒的によくなりましたが、形状としては1型のほうがよくできていました。3型は全体的になぜか前下がりで、長い下り坂が続いたりすると気が付くと体がずいぶん前にずり落ちてることもあります。普通に座って普通に高速道路などを走ると快適なのですが、峠をきびきび走ろうとするとかなりダメダメです。これ、ここだけ1型のシートが使えないかなあとか思ってたりします。なんせシートを受ける車体側のラッチ部品は位置も含めて1型と3型で同じっぽいので。

 カウリングは相変わらず複雑な構造のレイヤー構造になっていますが、1型と比べネジで締められてるところが大幅にへり、大半がピンスナップかクイックファスナーに変わっています。これはかなり便利です。また、パニアケースの取り付けラッチが車体カウリングと一体化され、その都合でシートカウルがかなり幅広に変化しました。これもカウリング総とっかえくらいの根性でやれば1型の奴がまるまる移植できそうな雰囲気です。ちなみにフレームとサブフレームは1型と3型でモノは同じです。
○電装その他
 GTは知りませんが無印に関しては基本的に電装に大きな差はありません。フロントカウル内に2種類のDC電源取り出しがあり、090MHの防水2極のコネクタのほうがイグニッション連動電源になります。また、シート下にも3つ電源が来ており、うち2つがイグニッション連動です。ライダーシートを受ける金具の下に入り込んでる090MH防水コネクタで茶黒の線がついてる奴が通常電源を取るためのイグニション連動電源で、簡単にアクセスできる同じ型番のコネクタは常時通電でこっちはセキュリティ用です。もう1つ4極のコネクタもありこちらもイグニション連動です。

 その他、シガーソケットが1つだけついてるとか、その辺も前モデルとまったく同じです。
(C)1998/2008/2016 Takayuki Kazahaya