夏至のレイラインに秘めた結界を追う 2/5
第1章 〜出撃前夜〜
 実際にレイラインがどういう経路をたどっているのか、まずはこの辺りの調査をしなくちゃ話は始まりません。そこでカシミールとプロアトラスを利用し、実際に京都府加佐郡大江町の元伊勢皇大神社と伊勢市の伊勢神宮を結んでレイラインを引いてみることにします。すると主要なところでは建部大社、近江神宮、加茂御祖神社、紫香楽宮跡がほぼぴったりレイライン上に乗っていることがわかりました。このあたりはGoogleで検索してもおよそ似たような結果が出ますね。また、引いたラインからレイラインに漸近する延喜式内社も検索しておきました。計画的ツーリングの場合ある程度はコースを考えておくのも基本ですからね。事前に式内社の検索を行ったのは、当然ながらご朱印収集も兼ねているため。これを機会にある程度は集めておきたいという気持ちもあったのでした。さてはて、事前に有給の取得も済ませておき、早速出撃日がやってまいりました。ちなみにこれ、24時間耐久ツーリングの一環でもあります。
第2章 〜戦艦攝津出撃〜
 6月20日、世間様は平日ですね。思いっきり月曜日なんですが、今日だけはごめんなさいって感じで定時でさっさと帰っちゃいました。元々雨っぽい予報だったのに全然降りそうにない天気ですが、一応用心のため左舷に撮影機材を、右舷に雨具とシュラフを詰め込んでおいてから夕食を頂き、出撃の23時まで仮眠をとることにしました。しかしなんでわざわざ有給とってまでって話もあるんですが、当時の私はなにかの憑き物にとらわれたように、こうやって神事巡りや神社巡りを繰り返していました。装備はK2パニア左右+タンクバッグといういでたち。トップケースはつけていませんでした。この装備選択が後々自分の首を軽く締めてしまうのでした。定時で帰宅した私は晩御飯も早々に2時間ほど仮眠をし、出撃に備えるのでした。

 そして20日23時前、予定通り十三通りから梅田駅前を駆け抜けて阪奈道路へと向かいます。阪名道路の学園前付近で給油を行い、大仏殿前から天理街道で天理へ抜け、天理からは名阪国道で一路伊賀上野へと向かいました。伊賀上野からは名張に向かうのですが、実は思いっきりコースミスをしてしまい、慌てて地図をチェックして再度ルーティング実行、予定通り阿保の交差点から初瀬街道へと入ります。ここからが青山峠区間です。しかしこの時間帯の青山峠ってだーれもいませんよ。そりゃ幽霊伝説が出るのも頷けます。直線と中高速コーナーしかないのでほとんど100〜180kmで走れてしまうのですよね。まぁ実際には大体120km前後巡行でして、それでも世間様では赤キップで一発取り消し確定の速度。ダメダメですな。そんなガラ空きの状況のおかげもあり、当時装備したてのオーリンズの中高速部のセッティングテストが楽しく出来ました。

 青山峠を降りて一志郡を抜けて久居市内に入り、そして伊勢へと向かう国道42号線に入りました。この時点で夏越の祓えに参加しそうな車体は私以外に奈良ナンバーのワゴン車1台。ほかには全然クルマを見かけません。42号線から眺める夜景は見渡す限り田んぼなのですが、その田んぼの中にぽつんぽつんとラブホが建ってるんですよね。なんていうかシュールな風景です。一緒に走ってる奈良ナンバーのワゴンが相当ハイペースでぶっ飛ばしてくれます。そんなペースで走っちゃったせいか、予定よりも1時間半も早く二見ヶ浦に着いてしまったのでした。
第3章 〜日の出の神事と伊勢神宮参拝〜
 二見興玉神社に着いたらまずは境内へと入り、参拝を済ませます。まだ午前1時過ぎだというのに,、すでにご来光を撮ろうという方々が沢山陣取っておられます。揃いもそろって望遠レンズつけて、同じ橋の上から同じ方向にずらずらと砲列を並べているところに、あまりの工夫や独創性のなさが伺えます。皆さんそろってPLフィルタをクルクルまわしているのも失笑モンです。そんなハンコで押したみたいな写真を撮る為だけに並んでるなんてこいつら相当ヒマなんだなーって思ったりもしたのですが、平日に神事めぐりをしてる私も人のことは言えません。適度に神職さんらとお話をしているうちに授与所を開けてくださるということなので、この時点で御朱印を頂くことにしました。神職さんのお話によると、こうやって夏至の神事に来る人は多いそうです。その大半はやっぱり日の出の撮影が目当ての亀爺どもだそうで、神事そのものが見たいとか、神事に参加したいっていう部外者は少ないそうです。境内の拝殿前には茅の輪が設置されていました。この時期のお祭りに茅の輪は定番ですが、これって元々祇園神社の祭事だったんじゃないの?と少し疑問に思えるのは内緒です。

 さて、3時半になると神事が始まりました。宮司の祝詞奏上に続いて玉串の奉納があり、実際に特殊神事を行う皇學館大學の学生らにより境内にて禊祓えの儀式があります。みなで大声で謡曲を歌いながら祓い清めていく姿は「日本人でよかった、この国の文化を知ってよかった」と思う一瞬でした。清めが終わると彼らは海に入って日の出を遥拝するのですが、今年はなんとどんより曇っていて日の出は見えず。残念……。仕方がないのでもう一度拝殿で拝礼し、茅の輪を潜って次なる目的地、伊勢神宮と豊受大神宮を目指しました。そうそう、境内の外では地元の方々による炊き出しで、お粥とお汁が振舞われていました。空きっぱらにはありがたいもんです。朝ご飯代わりに炊き出しをかきこんで神宮参拝に出かけました。

 実は私、今回が伊勢参り初体験だったりします。これだけ神社巡礼をしておきながら、こういうことってあるもんなんですよ。今回は外宮(豊受大神宮)、月夜見宮、内宮(皇大神宮)と3社だけピックして参拝しました。時間ありませんからねぇ。で、実はこの3社を巡礼していて気づいたのですが、内宮だけなんか流れている空気の緊張感が違うのです。外宮は清浄だけど温かみのある空気と時間が流れていたのですが、内宮はなにか緊張感だけがあり、ぴりぴりとした空気でした。外宮の空気はどこかで感じたことがあるんだよなぁ……、なんて思いながら国道を北上し、次の目的地である伊賀神戸を目指しました。
(C)1998/2005/2006 Takayuki Kazahaya