夏至のレイラインに秘めた結界を追う 1/5
○序章 〜ツーリング概要〜
 夏至の日というのは太陽神である天照皇大神の力がもっとも強くなる日であり、天照皇大神を頂点に八百万神々を祀る神道にとって、この日の太陽運行のラインは最も強力な結界ラインとなる。夏至の日の朝に伊勢の二見が浦から伊勢神宮内宮を通った太陽は平安京を通り抜け、そして大江元伊勢の神体山である日室岳の山頂へと没する。その太陽の道筋のラインを利用して作られたのが平安京、つまり現在の京都である。桓武天皇は自分が暗殺した早良皇子の怨霊に相当怯えていたらしく、平安京に強固な方位結界を張ったようだ。今回の旅は夏至の結界のレイラインを追いかけるとともに2つの太陽祭祀の神事に参加してみようと思った。レイラインという言葉の意味はイギリスが発祥で、光の道筋のように聖地を貫く1本の直線という意味から来ている。イギリスの考古学者ワトキンスが見つけた理論ということだ。

○伊勢〜元伊勢ラインとは
 ところでこの伊勢〜元伊勢ラインというのは単体のレイラインであるとともに、近畿に描かれる壮大な五芒星のうちの一部でもあるのは、その手のスジの方々にはいまさら説明するまでもないことである。左に簡単な概略図を掲載したが、近畿に存在する5つの霊的な聖地、伊勢内宮、伊弉諾神宮(幽宮)、大江元伊勢、伊吹山、熊野大社、これらを結ぶと1つの辺が約170kmの巨大な五角形が現れる。そしてこの五角形の重心にあるのが平城京、伊勢と幽宮の中点に飛鳥宮、伊勢=元伊勢ラインと幽宮=伊吹ラインの交点に平安京がそれぞれ立地している。また、熊野本宮と3つの都を結ぶラインはキッチリと南北方向に走っており、北端は八百比丘尼伝説の残る若狭湾に、そして南端は徐福が大海原へと旅立ったという串本へと達しているのだ。ここまでの配置は偶然とは考えられない。また、なぜか不思議なことに、この170kmという距離は経度1度分の距離に相当するのだ。先人たちはどういう技術を使ったのかは知らないが、天然由来ではない聖地を的確に配置し、五芒星と五行の力を利用し、日向から大和に入った政権のために巨大な結界をはったものだと思われる。

○五行って何?
 さて、五行という言葉を書いたが、風水や九星占術において五角形というのは気の流れを表し、非常に重要な意味合いを持ってくる。これが五行だ。ここに五行の気の流れをあらわす図を2つ、下に提示する。気は五角形の各頂点を右向きに回り、上から木→火→土→金→水と巡る。隣り合う要素同士は相生といい、お互いを助け合う。逆に右回りに描かれていく対角線で浮かび上がる五芒星はそれぞれの関係を相克といい、ベクトルの向かう方向に相手の気を削いでいく。木→土、土→水、水→火、火→金、金→木、そういう流れで気を削ぎあうのだ。
 この2つの気の流れは永遠の流れとなり、内側へは多大な守護の結界となり魔を退ける。この内側に魔を取り込めば二度と出られる頑強なる結界となる。そんなものが近畿の5つの聖地に仕込まれているなんて私は知らなかった。大きく落ち込み、苦悶し続ける日々にネットをさまよい、レイラインという言葉を見つけ、各地に張り巡らされた結界の存在を知るまでは。
#ちなみに私の本命星は七赤金星、月命星は六白金星。本命も月命も金星は珍しいらしい
#九星では20代半ばまでは月命星が、それ以降は本命星が、その人の運勢を左右するとされる


○大祓えと夏至
 夏至の日、多くの神社では夏越の大祓という神事が行われる。「あれ?夏に大祓すんの?あれって年末年始の神事ちゃうん?」って思った人、ちょと神事に詳しいとみた。大祓というのはたまったケガレを祓い新しい気を充填しようという神事であり、年越の大祓に関して歳但祭という名前で知られる。これには参加される人も多いだろう。んじゃどうしてこの夏の時期にも大祓なの?という疑問もわくだろう。神道では年越以外に夏至の時期にも大祓を行う。半年間でたまった邪気を祓い、枯れてしまったエネルギーを太陽の力を借りて充填しよう、そういう神事なのだ。天照皇大神を頂点とする神道では太陽のエネルギーというのは大事なものである。その太陽の力がもっともピークに達するとされるのが1年でもっとも日の長い夏至の日だ。その夏至にあわせて大祓神事を行うことにより太陽の恩恵を最大限に受ける、そういう意味合いなのだ。

○ケガレ?穢れ?気枯れ?
 ところで「ケガレ」という言葉について少し説明を。ケガレと書くと多くの方は「穢れ」や「汚れ」をイメージするだろう。確かにこういう意味合いもある。穢れ=業だと思えばいい。だが大祓でいうケガレは「気枯れ」という意味合いが強い。新年に神から頂いた気が半年の間に枯れてしまったので、夏至を機会に再充填しますか〜というのがこの、夏越の大祓神事の一番の意味合いなのだ。穢れと書いた場合の意味合いはというと、人間生きていく限りは動植物問わず、たの生命を糧にしないと駄目。その糧にするために貰い受けた生命に対しての感謝と、望まないとはいえ命を奪ったことへの懺悔という意味もあるのだそうだ。

 私このツーリングを敢行した年に大切なものをいくつか失ってしまい、急速に気を枯らしてしまったところがあった。6月中旬に死の床にいながらも私を励ました友人の言葉、その言葉に励まされて私はもう一度前を向く為のエネルギーを頂くためにも今回2つの夏越の大祓神事に参加し、穢れを祓い、自己の過ちを悔い改め、そして次なる戦いのパワーを別けていただこうと思った。

 さて説明が長くなったが、今回はそんなレイラインのうちの1つ、伊勢〜元伊勢ラインをたどり、日の出の大祓神事と日の入りの大祓神事の2つに参加することにした。Layline Projectの内田氏のごとくGPSを持っていればレイライン上を確実にトレースできるのだろうが、今回は時間の問題もあり、伊勢、信楽、大津、京都、元伊勢と要点だけをピックアップしてたどることにした。
(C)1998/2005/2006 Takayuki Kazahaya