YAMAHA TT250R Raid 4GY5 Japan
What's about TT250R Raid
 XT225W Serowと入れ替えに、日常のゲタから近隣ツー、多少のオフまでと、万能ゲタ的な意味合いで導入した車体。実は大学時代から欲しかった車体の1つだったりします。

 レイドの前にTT250Rについて少し。80年代半ばからホンダとカワサキは4ストロークのED系トレール車を投入します。MD03やMD08は名機ですね。同時期にヤマハは空冷DOHCのXT250Tを出しますが、前後してカワサキは水冷DOHCのKL250Rを投入します。途中、ヤマハはXT250Tをフロントディスク化するものの、2ストロークは37F型DT200Rでフロントディスク搭載化やYPVS装備などの格段の進歩を遂げ、3ETで前後ディスク化とクランクリードバルブ化、前後足回りの大幅進化、そして1991年発売のDT200WR(3XP)でどうみてもレースベース車ちゃうかとしか思えないほどにまで進化します(実際、海外では発電系統を3ET相当にして12Lのポリタン、クロスミッション、ハイシートにしたWR200Rとして発売。それ以外は同等で部品互換性あり)。しかし、4スト車は途中で1KHセローやTW200などをリリースするものの、KLやXLRのようなとんがったマシンが出てくるのは、1993年のTT250Rの登場を待たねばなりませんでした。

 TT250RはXT250T系空冷DOHCをさらに進化させた新開発のDOHC4バルブエンジンを搭載し、コンパクト化されつつ30psを発揮します。また、フロントサスにはφ43mmのカートリッジ式正立を採用し、リアサスにはクイックリリース付きアルミスイングアームにリザーバ付きリンクサス、新設計フレームなど、エンデューロで戦えるものを目指した設計となっております。TT250R RaidはこのTT250Rをベースにラリーレイドのイメージを強く意識したツーリングモデルとして生まれました。TT250Rとフレームとエンジンは共通ながら、前後足回りのショートストローク化、フロントサスペンションの通常型テレスコピック化、リアスイングアームの鉄製化、チェーンとスプロケットの520から428への変更、大径ライトとアルミ製のガード装備、17リットルのビッグタンクにロングライド向けのシート、積載を重視したサブフレーム、小物入れを内蔵したサイドカバーなどなど、多岐にわたる変更を受けています。でも、エンジンとフレームが同じなので、なぜか認定形式名は4GYのままなんですよね。TT250R Raidの発売以降、ホンダとスズキは自社で出しているこの手の車輌の拡充を謀ります。ホンダは1990年にXLR Bajaを出していますが、1995年、スーパーXRをベースにしたXR250 BAJAを出します。また、92年にDR250SベースのDJEBEL250を出していたスズキもDR250SをDR250Rへとフルモデルチェンジした際にDJBEL250XCに改良し、それぞれTT250R Raid同様の多機能デジタルメーターを装備したり、ビッグタンク化したりすることとなります。そういう影響を与えた車種だったのでした。

 我が家のTT250R Raidは行きつけのバイク屋で中古として出てきたものです。この店を経由してユーザーが変わるってこれで何度目だろうというくらいなんですが、過去のオーナーの大半は店が把握しており、修理履歴などもここ数年分ははっきりしているので、安くてお買い得な車体でした。購入時点での走行距離は19000km程度です。来歴が分かってはいるので初代オーナーの扱いの酷さも分かっていたのですが、度重なる修理でまさかこれほどまで酷い扱いだったとは、とあきれ返っていたりもしますが。
 
管理人のTT250R Raid(2015年01月時点での仕様)

 
主なスペック
機種コード 4GY5
全長/全幅/全高 2145/859/1290mm
発動機種類 空冷4サイクル並列単気筒4バルブDOHC
排気量/径/行程 249cc/73.0×59.6mm(標準)
270cc/76.0×59.6mm(OH後)
最大出力 30ps/8,500rpm
最大トルク 2.8kg-m/7,000rpm
タンク容量 16ットル
主な変更点
ZETA CXバー MX412
ZETA PIVOT LEVER CP ZE41-3161
TT250R用アルミスイングアーム
e-auto fun 20/20W LEDバルブ
 
 
使用タイヤ
前:MICHELIN SIRAC 3.00-21 51T
後:MICHELIN SIRAC 4.60-18 63T
追加装備
ワイズギア 大型ナックルガード
ワイズギア ディスクガード
ETSUMI自由雲台+ハクバ製クイックシュー
K-MAX 50Lトップケース
KITAKO USB電源コネクタ
 
変更設定
特記なし
インプレッション
○エンジン関係
 セローの感覚で乗るとおおっとってなるほどには低速がありません。といっても2スト125などと比べると月とすっぽんですが、しかしある程度回してやらんとダメですね。この辺は時速1kmでも動いてれば2速から半クラなしで加速できるセローで慣れすぎてしまっていました。ある程度回り出すと、パワーバンドの真ん中くらいまではしっかりとパワー感がありますが、パワーバンド後半からはただ回ってるだけ〜って感じです。パワーバンド入り口〜中盤くらいを使って走るのがよさそうです。

 ギア費は4速まではクロス気味ですが、5速と6速が離れていて、5速の段階でオーバードライブになっています。5速の減速比が0.888、6速の減速比が0.785ですから、そりゃ重いですよ。この減速比についてはノーマルTT250Rも同じです。実用的には75kmくらいは出てないと6速に入れられないので、街中を普通に走る分には5速で十分です。このエンジンをSOHC化した現行セローのエンジンが5速までしかないのも納得のエンジン特性です。

 振動は恐ろしく少ないです。セローよりも少ないですし、XTZ750よりも少ない感じです。また、このエンジン、結構精度が高いことでも有名です。TT-R登場時の1994年、初期ロットの一部数台にクランクケースのあわせ面の液体ガスケットを塗り忘れて出荷してしまった固体があるのですが、こいつらがEDとかで使い倒して軒並み2万キロくらい走ってからようやくエンジンオイルが滲み、工程不良が発覚した実話があります。結構頑丈なエンジンです。
 
○足回り・ハンドリング
 オンロードでは素直で扱いやすく、リーンウィズ〜リーンアウトですいすい曲がっていく素直なハンドリングをしています。また、車体剛性が恐ろしくかっちりしており、ロードツーリングを苦もなくロングでこなしてしまいます。根本的には4ストオフロードの荷重移動ですね。

 オフロードは一般の林道というレベルではノーマルのTT250Rよりも却って扱いやすいくらいです。というのも、ノーマルTT250Rの足回りはカートリッジ式なんですが、コースやEDでの走行重視で長めで速く動く足回りをしています。で、これが林道レベルになると結構「落ち着かない」傾向として出てしまうので、ノーマルではあえてG10を入れて動作速度を落とすなんて方法もありました。レイドはノーマルと比べ、普通のテレスコにしてストロークを抑えてあるため、動きが最小限に抑えられて林道レベルだと却って扱いやすくなるんです。実際、その辺の予備知識なしで少し荒れたロングダートを走ったときも、そういう印象でした。ミシュランSIRACのままでも結構走るのでびっくりします。

 ちなみにリアのスイングアームですが、ノーマルTT250Rのアルミ製がボルトポンで使えます。鉄のノーマルスイングアームと比べて笑えるほど軽くボルトポンなので、カスタムとしては結構おすすめ。フロントサスとセットでリアサスのユニットを交換すれば、足回りの性能自体はTT250Rと同一にすることも可能です。が、実をいうと林道レベルではむしろRaidの足回りのほうが優秀だったりするので、あまりお勧めはしません。
 
○車体関係
 シート、疲れません!といっても普通のオフロードバイク比較での話しですが。何度か京都市内までとか、ちょっと遠目の林道に行くのとかにロングランをしていますが、結構楽です。16Lタンクは調子がいい車体だと本当に燃料が無くなる気がしないというのは、多くの人が異口同音に言う話です。ウチのはクラッチ交換するまで(焼け尽きていました)はかなり燃費が悪かったのでそこまで実感していなかったんですが、クラッチ交換後はロングランでは平均してリッター26〜27くらい走っており、TT-Rの中では大当たりの車体だそうです。

 荷物の積載も私みたいにハコをつけてない人たちは凄く積みやすいとよく言います。多分、DT時代のようにツアラーバッグで積んでると同じ印象だったと思います。
 
○電装その他
 レイドの特徴はなんといってもライトでしょう。XLR-BAJAやXR-BAJAが小口径のライトを2発積んでフレームマウントにしたのにたいし、レイドとDJEBELは大口径ライトを1発搭載しフォークマウントにしています。フレームマウントだとロードバイクでもよくあるのですが、ハンドルを切ってもあさっての方向を向いてしまい、旋回中に照らしたいところを照らしてくれないんですよ。ハンドルマウントだとハンドリングは重くなりますが、その分旋回中の照射範囲が広く、安心して夜間も走れるってわけです。
 
 メーターはデジタル化されており、バックライトもついています。トリップが2つにさらに時計もついています。ただ欠点も1つ。バッテリーのトラブルでしょっちゅうODOが飛んでしまうことです。このおかげで走行距離不明なTT-Rは腐るほどいるので、ここは要注意でしょう。そうそう、これ以降のデジタルメーター機種はメーターの内部にも色々と仕掛けがしてあったりしますが、こいつにはそういう仕掛けはありません。だもんで、その気になればメーターギアを追加してアナログメーターに交換することもできなくもないです。
 
○カスタムと弱点
 先述のとおりスイングアームにノーマルTT250Rのアルミ製がボルトポンで装着できます。また、チェーンも同じようにリンク数・ギア数がノーマルTT-Rそのままで520にコンバートできますが、こちらはツーリングの快適性という意味ではあまりやる意味はありません。というのも、428のほうが振動とかとかが少ないためで、520にするのは部品の豊富さとかそういう点だけですね。

 最大の弱点は店長いわく、やはりクラッチ。元々のTT250Rがクラッチ焼けが頻発したために対策としてオイル容量を200cc増やしています。それでも焼いてしまう例が多発しております。私の車体も最初のオーナーがあまり上手でないくせにコースで使い倒していたので御多分に漏れず焼け切れていて、ミッション操作から燃費からありとあらゆる問題を引き起こしていました。で、その対策カスタムとしては、クラッチボスにオイル通路を増設するというウルトラCがあったりなかったり。

 オイルクーラーを追加できるんですが、ネットオークションで買う場合は「クラッチカバー側に取り付けるオイル流路変更用のネジ類が揃っているか」を確認することは超重要です。これをせずにつけるとオイルがクーラーにもエンジンにもロクに回らないという悲惨な状況でエンジンそのものが焼きついてしまうので本当に注意が必要です。また、上述していますが、TT250Rのアルミスイングアームが完全にボルトオンで流用できます。

 某社から270tにするボアアップキットが結構いい値段で出ていますが、実はあれはZZ-R1100のピストンの天面加工(面下げ)をしているだけのシロモノです。ピストンとシリンダの加工屋にツテがあるなら、ZZ-R1100D型のピストンとリングを入手し、ボーリング+天面の面下げをすれば同じものが半額位で手に入ります。
(C)2012/2015 Takayuki Kazahaya